2018年10月2日

インタビュー 慶應義塾大学理工学部 栗原 聡 氏

「人と共生できるAI」の研究を進める栗原聡氏にこれまでのキャリア、そして、AIの果たす役割について伺いました。インタビュアーは日本能率協会、小関俊洋です。(以下敬称略)

「心の社会」が研究のきっかけ

――― 栗原先生のキャリアやお立場についてお話しいただけますか?

大学を卒業して、NTT 基礎研究所に入社したのですが、その頃から私の研究テーマは変わっていません。人間が考えたり器用に行動できる原理、その仕組みを解き明かしたいと思って、ずっと研究をしてきました。まず何を研究するかと考えた時に、最初に考えたのが当たり前ですが「脳」を参考にすることです。

マルチエージェントという言葉をご存知でしょうか。脳は外から見ると、一つの塊に見えますが、実際はそうではありません。大脳や小脳,扁桃体など複数のパーツから出来ており、その一つ一つのパーツも膨大な数の神経細胞の集合体です。脳は、複数のモジュールが連携し協調することで、知能を生み出しているのです。

マーヴィン・ミンスキーという、人工知能研究を開拓された偉大な先生が執筆された「心の社会」という本があり、日本語訳を安西祐一郎先生がされていますが、その本に大きな刺激を受けました。我々の心は複数の小さな心から出来ており、それらが社会を構成し、お互いに連携し合うことで、小さな心達の社会システムとして全体としての心が出来ている、という考え方であり、それはまさにマルチエージェントと呼ばれる研究分野の考えそのものです。難しい問題も、1つの人工知能では解くことができなくても、複数の人工知能がお互いに協力することで解けるのではないか? その際、どのように協力させればよいのか? といったところに興味を持ち、研究を進めました。

例えば、それぞれ自律的に動作する人工知能が100体あるとして、その100体がお互いに協調する場合、どのような協調の仕方が考えられるでしょうか。100体の中に親玉的な人工知能が一人いて、残り99体に指令を出す方法もあるでしょうし、親玉は存在せず、全員の合意ができるまでひたすら各自が周りの人工知能達と議論する方法もあります。ここで、お互いに連携する人工知能同士を線で結ぶと、協調の仕方をネットワークとして可視化できます。そこで、現在の研究テーマの1つとして、効果的な協調を実現するための協調ネットワーク形態について研究をしています。「人工知能を作るためにはどのようなパーツが必要なのか」というところから研究を進めて、今ではパーツ同士の関係にも大いに興味があります。

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