2018年6月5日

講演者インタビュー ダイキン工業株式会社 河原 克己 氏

東京開催にもご参加いただいたダイキン工業株式会社、副センター長 河原 克己さん。大阪開催では、講演だけではなくテクノロジー・イノベーションセンターの会場提供、センター見学でもご協力いただきます。インタビュアーは日本能率協会、小関俊洋です。(以下敬称略)

技術だけのスペシャリストを育てるのではない

(小関)
河原様の現在のお立場と役割を教えてください。

(河原)
ダイキン、テクノロジー・イノベーションセンターの副センター長をしています。センターでは産官学連携の推進をしています。

(小関)
センターの概要について、教えていただけますか?

(河原)
設立当初の狙いは社内外の協創によって差別化技術を持った商品を生み出すことでしたが、2017年にさらに明確で強いミッションが加わりました。グローバルな研究開発のコントロールタワーとして、全世界の開発拠点を統括することです。ダイキンは売上高2兆円の77%が海外です。そして、全従業員7万人のうち5万人以上が外国人になっています。海外にはR&Dセンターが8箇所ありますが、それをコントロールしていく役割が加わりました。
おかげさまで、このセンターにはこの2年半で6万人のお客様に来場していただいています。NDA(秘密保持契約)ベースでは、300ほどのプロジェクトを検討しています。

(小関)
センターの技術者の人数は?

(河原)
現時点では約700名ですが、加えて今年30名の新入社員が入社しました。また、それとは別にダイキン情報技術大学に入る新入社員が100名います。ですので、今年だけで約130名の社員が新入社員で入ってきています。

(小関)
とても多いですね。ダイキン情報技術大学の設立の理由は?

(河原)
日本全体を見まわせば優れた人財はたくさんいると思うのですが、弊社には情報技術系の人財がいません。比率で言えば、1%ぐらいしかない。急加速で人財を獲得、育成しなければいけません。そのためにダイキン情報技術大学を開講して、大阪大学を始めとした大学の先生やベンチャー企業さんから講師を招き、3年計画で700人、5年計画で1,000人規模の情報技術者を育てようとしています。
ダイキン情報技術大学は、卒業までが2年間の期間になりますが、「新卒100人が2年間タダ飯」とメディアでも取り上げていただきました。それほどしなければいけないくらい、この分野での人財育成がとても重要だと考えているのです。
育てていきたい人財は単なるAIやIoTの解析技術だけのスペシャリストではありません。そうではなくて、技術とビジネスをうまくつなげていくことができる人財です。技術だけを理解しているスペシャリストは計算機でしかありません。ビジネスモデルや事業をよく理解して、アウトプットや使い道を考えることが必要になっています。「なんのためにAIを使うのか」「なんのためにデータ解析をするのか」と考えることができる人を育てたいんです。
シリコンバレーで話を聞くと、優秀な技術者はビジネスモデルを自分で考えることができて、顧客価値創出につなげている。それがトッププレーヤーなんです。
AI、ビッグデータ解析の技術がわかり、データ解析を自分で使いこなすことができて、目的や価値創造、ビジネスモデルを自ら考えることができる人を育てる。それが一番の課題です。現時点で正しいソリューションがあるわけではありません。今回、基調講演をされる大阪大学八木先生にもご協力をいただいていますが、いろんな方の力を借りるしかないと思っています。

大企業こそイノベーション

(小関)
今年の1月に東京でも講演をいただきましたが、ご講演した時の感想は?

(河原)
まず感じたのは、AI、ビッグデータ活用に対する興味関心の高さです。参加者全員が真剣に勉強しにきている。熱気を感じました。一方で、当社も含めてですが、日本企業の取り組みには差があるとも感じました。私たちもまだまだこれからという部分がありますが、寄せられたご質問を聞いても進捗度合いや視点が色々で、ものすごく多様になっている。会社さんやその部署によって必要なものが全然違っているのではないか、と感じました。

(小関)
今回、7月に大阪で開催されます。大阪開催については?

(河原)
元来、インターネット化が進んできて情報化社会になってきていますので、東京と大阪の地域の情報格差はなくなってきているのだとは思います。しかし、一方でいくらIoTやビッグデータ解析の話をしても、やはりフェイス・トゥ・フェイスで話を聞かないと伝わらないことがたくさんあります。そこはジレンマです。情報はなんでもネットで取れるから、会わなくてもいいかというとそんなわけではない。やっぱり技術を引っ張っている人に会わなければ、本当の最先端には触れられないと感じています。
例えば、AI研究者のことを調べていけば、第一人者である落合陽一先生にたどり着きますが、実際に会おうと思っても関東でないとなかなか会えない。幸運にも私たちは一緒に共同研究をさせていただいています。空気をアートで見える化しようという研究です。空気を見える化することで、物理的な快適性だけではなくて、感性にも訴えられる快適な空気を作ろうというプロジェクトです。

(小関)
大会の参加を検討されている方へのメッセージをお願いします。

(河原)
大阪の大会では弊社のテクノロジー・イノベーションセンターが会場となります。見学ツアーの時間も設定させていただいておりますので、どのような場所でイノベーションに取り組んでいるのかを実際に感じていただけるのではないかと思います。
最近はイノベーション創出においては、「ベンチャーが優等生、大企業が劣等生」と受け取られるような風潮があるような気がします。「大企業では革新的なことはできない」と思われてしまっている。もちろん、ベンチャーの方にも頑張って欲しいんですけど、本当の意味で日本を活性化したり、社会を変えるという意味では大きな企業がイノベーションを成功させないといけません。大企業が率先して頑張らないといけない。我々もしがらみやジレンマがありますが、新いイノベーションを起こしていきたい。
そのためにオープンイノベーションやダイキン情報技術大学に取り組んでいます。大企業こそ国を引っ張っていく気概を持って、イノベーションを起こしていかないといけないと思います。

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